2006年3月4月号 [zi:]ジィーより
(株)チームアクティブ 川澄哲さん
前回に引き続き、”ローディー”のお仕事を紹介します。今回紹介するのは、ローディーの派遣会社に所属し、さまざまな現場でその能力を提供している、いわゆる「プロのローディー」さんです。そこで今回は、「プロとしての仕事」とはどういうものかを中心に、話を伺いました。
まず最初に、ローディーの仕事内容について教えて欲しいのですが。
テック、テクニシャンとも呼ばれるんですが、楽器、機材のセッティングやチューニングなど楽器に関わるいろいろな仕事をします。ギター担当なら、ギター・テック、ベース担当ならベース・テックって呼ばれるんですけど。
ちなみに川澄さんは?
僕は、ギター・テックがメインです。ただ、バンドの規模にもよるんですが、ひとりでギターとベースを担当したり、ということも多いので、基本的な部分は、どの楽器でも一通り出来ますけど。
具体的には、どういう作業があるんですか?
たとえば、あるバンドが東京ドームでライブをやるとします。でも、会場の規模が大きくなれば、ライブ当日にセッティングから何から全部をやるっていうのは無理ですよね?だからって、メンバーが前日から入って、機材のセッティングから全部をやるかっていうと、そうもいかない。そこで、俺達が事前に行って、会場にあった立ち位置に機材をセッティングしたり、ライブが出来る状態に音を整えたりするんです
ちなみに、バンドやミュージシャン個人についている、いわゆるボーヤと呼ばれる人と、川澄さんのようにお仕事として数バンドにたずさわる方とがいますが、やっぱり仕事内容は違うんですか?
違いますね。ボーヤって言うのは、ミュージシャン個人について学ばせてもらっている人たちで、いわば師匠と弟子のような関係なんです。でも、ローディーは師匠と弟子という関係ではなくて、アーティストと同じか、よりプラスαの技術が必要なんです。
プラスαっていうのは?
さっきのライブの話で言うと、僕達が事前の準備をする場合、メンバーが入ってきていきなり本番が出来る、っていうレベルまで音作りをしておくのがプロです。どの会場でも、いつも同じ音が出るわけではないんですよ。たとえば最初に音を出してみた時に、いつもよりノイズが多めだとします。そしたら、そのノイズを減らす為に、機材のコンセントをさす向きを変えたりだとか、いろいろな技を使って、アーティストが好む1番いい音を作るのがプロだと思うんですよ。
楽器や機材に関する知識は、アーティスト以上に必要なんですね。それに、アーティストの好みの音も把握しないとできないですよね?
そうなんです。そこが難しいところで、その人の好みや弾き癖を把握しないとできないんです。だから、僕は主だった曲は全曲コピーしてますね。で、ライブ前の仕込みの段階で、曲を演奏しちゃうんですよ。そうすると、自分たちも音を作りやすいし、それだけじゃなくて、PAさんなんかも、すごく決めやすくなるんです。
そういうのって、ローディーさんはみんなやるんですか?
いや、みんなではないです。俺は、自分が楽器を演奏するのが好きっていうのもありつつ、昔U2のテックさんがそうするっていうのを聞いて、それでやりはじめたんです。やっぱりやってみると全然違いますね。癖なんかも、すごく分かりやすくなりますよ。
すごい!そこまでやれるからこそ、信頼もされるんですね。あと、もちろんライブだけじゃなく、レコーディングにも行くんですよね?
はい。平たく言うと、メンバーが楽器を使う時は必ず行きます。
じゃあ、アーティストと一緒にいる時間って、すごく長くなりますよね?それって、人間的な部分―― 信頼関係や気が合う合わない―― もすごく重要になってくるんじゃないですか?
もうね、そこは本っ当に大事です。そこが原因で、途中でクビになる人もいるぐらいですからね。テクニックももちろんですが、やっぱり人間関係は一番大切だと思います。信頼関係が築けなければ、この仕事はできないですよ。だから僕は、楽器どうこうっていうよりもまず、人としての付合いという部分を大切に考えてますね。
では最後に、この仕事でやりがいを感じるのはどんな部分ですか?
人によってやりがいは違うと思いますけど、バンドと共に自分が大きくなっていけるところと、バンドの成長を見られることですね。