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音楽文化を支えるローディーの第一人者

帝国データバンクニュース”COMPANY NOW! 第357回”2007.03.16より

(株)チームアクティブ 代表取締役 河原真澄

コンサートやライブ会場には必ず、縁の下の力持ちがいる。楽器・アンプなどの機材の搬送からセッティング、チューニングなど、音出しに関わる「ローディー」と呼ばれるスタッフだ。楽器を搬送しセッティングするだけではなく、アーティストの要望する音を”作る”ローディーは、経験から得るテクニックやノウハウが求められる。(株)チームアクティブは、こうした専門性を備えたスタッフを擁するローディーのプロ集団だ。

当社の基幹業務はローディースタッフの派遣。スタッフは楽器・機材の搬送、セッティングを行うのはもちろん、場所・アーティストに合わせた音や効果を作り、本番中にもさまざまな調整を行う。アーティストを演奏に専念させ、コンサートのクオリティを向上させている。ところで、20年ほど前まで日本にこの「ローディー」という概念はなかったという。それまでは「ボーヤ」と呼ばれるアーティストの付き人や事務所の担当者がライブを手伝う形で作っていた。現在の「ローディー」の形を確立させたのは、当社の河原社長。1983年、「白井貴子&クレイジーボーイズ」を担当し音楽業務の技術・ノウハウを蓄えた河原氏が音の職人として当社の前進となるローディー組織を結成したことが原型となった。92年に会社組織として当社が設立され、今では多くの有名アーティストが信頼を寄せるコンサートに欠かせない存在だ。

「アーティストがステージ上で求めることを理解し、コンサート全体のあらゆることに対応します」と河原社長が言うように、ローディーは音楽知識のほか一人ひとりのヒューマンスキルが不可欠。年間200アーティストものコンサートライブを手がける当社は「人が資本」の会社だ。「将来的にはローディーの学校を作りたい」という言葉からもうかがえるよう、業界の第一人者としてローディーの育成を重視する。

現在、音楽業界もデジタル化が進み、音楽配信などから新しい曲が簡単に手に入るようになった。だが、河原社長は言う。「デジタル化が進むこと自体は悪いことではありませんが、アナログの良さが忘れられてしまうことは怖いですね」。限られた容量の中に”音を凝縮”させているMP3プレーヤーや携帯電話から聞くデジタル音楽しか知らない人が増えていることを危惧する。「ライブで音源から人間の体に直接届く音には力があります。環境によって音は変わりますし、音が環境を変えることもできます」。質の違いを誰よりも知る音のプロは言い切る。

音の職人集団である当社は、時代の潮流に合わせて発展しながら”本物の音”を体感できるライブの場を守り、”音”の追求を続ける。

音に生きる15の職人

“カスタムピープル”12月号増刊「音に生きる2006年Winter」より

(株)チームアクティブ ローディー部チーフテクニシャン 三島陵太郎

幕が開き、ライヴが始まる。ファーストステージが終わり、一旦アーティストが袖にはけると舞台は暗転。すると舞台の袖から人が現れ、暗がりのなかで楽器を入れ替えたり、マイクスタンドを立てたり、ドラムを叩いたり、ギターを弾き始める。そして彼らが再び袖にはけるとアーティストが登場しセカンドステージが始まる。
幕間、幕間に現れ、暗がりのなかうごめく彼らはいったいどんな人たちなのだろうか。

「僕らは潤滑油みたいなものです」

そう語るのは三島さん。彼の職業は”テクニシャン”という。楽器や機材に関する幅広い知識でミュージシャンをサポートしていくのが彼の仕事だ。
彼らは ミュージシャンから命の次に大切な楽器を預かり、ギターやベースなどのメンテナンスやチューニングを担当する。もちろんライヴにも同行する。ライヴではバンドが使用する機材の運搬・セッティングを行い、本番が始まると袖に控えておき、いつなんどき起こるともわからないトラブルに備えて袖で待機。ミュージシャンが楽器を取り替えるときも、彼らはそのアシストをする。ステージの暗がりでうごめく人々の正体、それは彼らだったのである。

テクニシャンはもちろんツアーにも同行する。海外ではツアーを”ロードする”といい、アーティストも含め、そのツアーに関わるすべてのスタッフのことを”ローディー”と呼ぶ。それに由来し、彼らを”ローディー”と呼ぶことが多いが、最近では”テクニシャン”または”テック”という言葉が定着してきている。

この世界に入って16年のベテラン・テクニシャン三島さん。もともとは地元名古屋でアルバイトをしながらバンド活動を続けていた。「どうせやるなら東京で」そんな思いから20歳のときに上京。

「姉の知り合いから今の会社を紹介されたんです。大道具のバイトをしていたんだけど、うちで仕事してみないかって言われて。ギタリストを目指していたから勉強にもなるかなって思って始めたのがきっかけでした」

地獄だった1年目はかけがえのない1年

「あるアーティストのツアーに同行したんです。結構長いツアーで、リハーサルを含めてほぼ1年かけて全国をまわりました。そこで1から全部覚えていって・・・」

最近の日本は、どこかよそよそしく、他人行儀。他人を本気で怒れる人が少なくなったといわれているが、三島さんの新人時代は違う。ヘマをすれば、他のセクションの人から怒られたり説教されたりというのは、ごくごく当たり前のことだった。また、ツアーのスタッフは、バンドのメンバーもひっくるめて全員”家族なんだ”という意識でやっていた。だから、みんなでツアーを作り上げていくという意識があり、他のセクションの仕事を手伝ったりして、みんなで補いあったという。そして1日の仕事が終わってホテルに帰るとそのまま師匠の部屋に行き、その日の反省会と”ローディー”に必要な知識を学ぶ勉強会をした。

「毎日寝るのは朝の4時、5時でした。それからもう7時には起きていましたからね。きっと若かったからできたんでしょう。ほんと大変でした。いやでいやでしょうがなかったけど、余計なことを考えるヒマも時間もなかったんですよね。自分はド新人で何もできなかったから、みんなに付いていくのに必死で。とにかく日々生きていくのが精一杯でした」

今、思い返すと実は一番大事な時期であり、その1年で三島さんがこの世界で生きていく基盤ができたと言う。そうして必死に食らいついていった1年。少しずつ”ローディー”としての仕事が見えてきた。

そしてローディーを始めて3、4年したころ、地方でのツアーであるひとつの出来事があった。本番が終わり、観客も帰り、会場の片付けに入ろうというとき、1人、帰ろうとしない女の子がいるのだ。当然お客さんがいるから片付けに入るわけには行かず、撤収の時間だけが迫っていた。正直「面倒くせえな、早く帰れよ」と思っていたという。早く片付けに入りたかったのだ。本番を終え、身体の疲れはピークに達していた。舞台監督も「もう片付けちゃっていいよ、電源も落としちゃってよ。片付け始めればあの子も帰るでしょ」と。するとその女の子がスタッフのもとへ歩み寄って来て、一言「スタッフのみなさん、ありがとうございました」と頭を下げたという。

「そのときは自分が恥ずかしくて・・・、俺は何を思っていたんだろうって。当時もまだミュージシャンになる夢は捨て切れずに持っていて、そんななかでもこの仕事に対する魅力も感じていて。喜びも辛さも見えていて・・・。でも本質はわかっていなかったんだなって」
音楽にたずさわっていくってことがどういうことなのか、そのときその子に初めて教えられた気がしたという。自分のやっていることは人から「ありがとう」と言われる仕事なんだと。

三島さんはその出来事から、この仕事を続けていくことを決意した。そしてこのときのことはいまもずっと三島さんの心に焼き付いている。

一番近い立場にいるから テックは潤滑油になる

ミュージシャンにとってかけがえのない存在であるテクニシャン。ミュージシャンの身体の一部とも言える”道具”を預かる=守る仕事をしているのだから。ミュージシャンが最高のライヴをするためには、欠かすことのできない存在。

「立場的にはミュージシャンに一番近い存在なのかもしれません。ただ、だからこそミュージシャンとお客さんの間もそうだし、ミュージシャンと別のスタッフ、たとえばPAや舞台監督、照明・・・。ミュージシャンを中心に関わる人すべてのスタッフに対して僕らが潤滑油に、パイプ役にならなきゃいけない、そう思っています」

ミュージシャンがもしスタッフに言いにくいことがあったら、それに気づいてあげて、代わりにそれを伝える。楽器で音だけを作ればいいというだけではなく、テクニシャンはミュージシャンの楽器以外にもケアする部分がたくさんあるのだ。舞台の袖で楽器のみならずミュージシャンごと見守るテクニシャン。

「もしアーティストが愛だの恋だのと歌ったり、友情だのがんばれだの歌っていたら、同じものを思いながら、同じことをやらないと」
今、ミュージシャンが何を求めているのか、何を表現したがっているのか、観客に対してどういうことをしたがっているのか。それを常に考え、察する。直接それをテクニシャンがわかったところで、なにかをできるわけではない。彼らはあくまでもミュージシャンのサポートなのだから。大切なのは、いかにそれらをくみ取り、その上で、どうサポートしていくかということ。ミュージシャンの楽器を預かるということは、つまりそういうことなのだろう。テクニシャンは楽器を相手に仕事しているのではなく、”人”を相手に仕事をしているのだ。

最後に、三島さんに、テクニシャンをやっていてうれしいと思う瞬間とはどんなときかたずねてみた。
「アーティストから『今日すごい気持ちよくできたよ』って言われることは僕らにしてみれば最高の褒め言葉ですよね。何がどうだってわけでもないんだけど、すっげえ気持ちよくできた、ありがとう。そう言われたら、もう今日1日やってよかったなって。それが仮にアーティストが言わなくても、お客さんが満足ならそれはそれでうれしいんですよ。結局、ありがとうって言われるのが最高だと思うんですよ」

もし今度ライヴに行くことがあったら、暗がりのステージに注目して彼らの姿を追いかけてみてほしい。彼らは決して観客に見られることを望んではいないけれど、華やかなステージのすぐ横には彼らのような人がいる。それを感じることができたら、またちがった感動を得ることができるかもしれない。

お仕事図鑑

2006年7月 月刊 Birth-Day!! より

(株)チームアクティブ 大和正尚さん

ライブハウスやホールなどのコンサート会場で楽器をいじっている人を見たことはありませんか?
そのお仕事をしているのが、ローディーです。
楽器のセッティングだけでなく、機材の積みおろし、チューニングなど幅広く作業しています。

ローディーとは”孫の手”である。

この仕事自体、最近できた職業なんであまり知られていないんじゃないでしょうか。ライブが始まる前にギターとかを弾いてチェックしてる人、あれがローディーですね。専門の知識や経験をプロのミュージシャンに買ってもらっているんですよ。

仕事の内容を大雑把に言うと、朝トラックから楽器をおろして、夜トラックに積み込むまでの楽器の管理です。楽器には精密なものがあったりするから1個1個きちんと管理しなきゃいけない。力仕事ですけど、同時に丁寧さを求められる職場ですね。現場に入ったら、まずギターの調整をしたり、ドラムの皮を張り替えたりして、音を出せる状態に整備します。ステージに楽器が出せる状態になったらセッティング。それが終わった頃にミュージシャンが入ってきて、リハーサルをして、本番です。それからも忙しいですよ。本番直前まで最終チェックをしたり、本番中もギター・チェンジをしたり、現場によっては音色を切り替える場合もありますね。それで本番が終わったら、舞台を片付けてトラックに積みこむ、と。ほかにも舞台まわりの手伝いもしますから、結局ライブ全体に関わってますね。手が空いていれば、僕らはなんでもやりますから(笑)。

この仕事をしていて一番うれしいことは、バンドのメンバーが楽しそうにライブをやり終えること。ライブって、どうしてもトラブルを避けられないものなんです。たとえば、イージーミスのような人為的なものだったり、機材が壊れてしまったり、それに僕らがどう対応できるかによって、メンバーの気持ちも変わってくると思うんです。多少トラブルがあっても早く対処できて「それが気にならないくらい、いいライブができた」とかね。そのためにどんなことが起こりうるか、頭の中でシミュレーションしてきます。「このアンプが壊れたら、あの大きいアンプを出せるようにしておこう」って。大変ですけど、ツアーの最終日にメンバーから「あのときは本当に助かったよ。ありがとう!」っていう一言をもらえれば、それだけで本当に嬉しいし、次もやろうって思えますね。

相手が何を考えているかを常に思いやることは、作業をするうえでとても大切です。ローディーって、人一倍気遣いが必要な仕事なんです。楽器を直すことはもちろんなんですが・・・たとえば、視線で何かを探している人がいるとして、そこに探していたものがポンと出てきたら、向こうも「こいつなかなかやるじゃん」って思ってくれるわけですよ。それが信頼にもつながると思うんですよね。ミュージシャンからしたら、楽器は命。それを預かる身だからこそ信用第一。だから、相手への思いやりを忘れずに、気づいたらかゆいところに手が届く、長年愛用される孫の手のような存在でいられたらなんて思っています。

ローディーを目指す人にですか? とにかく音楽をいっぱい聴いたほうがいいと思いますよ。ジャンルにこだわらず、幅広く。音楽が好きな人じゃなかったらできない仕事だし。ミュージシャンに「○○みたいな感じの音がいいな」って言われてもその音を知らなかったら対応できないですからね。まったくの未経験でも大丈夫ですよ。コツは辞めないで続けることかな。現場に出て凹むことはいっぱいあると思いますけど、知識は後から付いてくるものなんだから続けることが大事ですよ。

人と音楽を結ぶ職人

2006年6月号 音遊人より

(株)チームアクティブ 代表取締役 河原真澄さん・他

音楽に関わっているのは、舞台で演ずる人だけではない。
華やかなショータイムを、陰でしっかりと支える人たちもいる。
ミュージシャンは演奏に専念する。
そのために、ローディーという職業がある。
ミュージシャンの楽器をケアし、よい音作りのサポートをする人たちだ。
ローディーは、ミュージシャンと同じように音楽を理解し、彼らの求めるものを提供する。
日本型ローディーを作りあげたチームアクティブ。
今回はその活動の現場を訪ねてみた。

ステージに登場できる唯一のサポーター

ライブで、曲の合間にミュージシャンにギターを手渡す人がいる。さりげなく渡す情景は、楽しいパフォーマンスの一部かのようだ。それはローディーの仕事である。

辞書で「ローディー」という単語をひくと、「歌手などの地方巡業に随行して、公演の準備・進行に携わる者」(『大辞泉』)と書いてある。思わず、楽器を運ぶ人を想像した。

日本には、かつてボーヤという仕事があった。ミュージシャンの楽器を運び、セッティングし、そして雑用もこなす付き人のことだ。
「欧米では、ローディーって、ツアーに出るスタッフ全員を指す言葉なんですよ。ひとつの楽器に一人のテックがつくんです。日本では制作費の問題もあって、ひとつの楽器だけじゃなくていくつもの楽器を一人で担当できるマルチな人間が求められたんです。」
説明してくれたのはチームアクティブ社長の河原真澄さん。

「ローディーとは、ミュージシャンのすべてをサポートする人。テックとは、より専門的に楽器のメンテナンスやチューニングができる人。そんなふうに言葉を使い分けています。ほかにクラフトマンというのもいて、ギターを製作できるほどの技術と知識がある人のことを言います」

欧米のように専門的な楽器の知識を持ちつつ、演奏の場以外でも支える。その結果、ミュージシャンのすべてをケアするという日本型のローディーが確立した。

ボーヤからローディーへと、二十年をかけて仕事の内容は徐々に移ってきた。しかし、奉公的なボーヤの名残が薄れていくまでには、すこし時間がかかったようだ。

「地方に仕事で行っても、報酬は弁当と二千円ということもありました。待遇のひどさは長くは続かなかったけれど、これではいけないって。自然にボーヤっぽいことをやっている人が集まって、仕事となり、組織になっていきました。」

そして現在、ローディーなしではライブが成立しないほど、その存在は大きくなった。

三月の末、都内で行われた宇都宮隆さんのライブ会場へ、リハーサル前にお邪魔した。そこで、この道二十三年の大竹茂美さんに会った。宇都宮さんのツアーに同行して約十年になる。普段はオフィスワーク中心だが、このツアーだけは毎年参加するのだと言う。
「ミュージシャンが演奏に専念できるように、音響などの仕事は全部ローディーがやるようになりました。年をとっても、ローディーとして呼んでくれる限りは参加したいですね。ミュージシャンと一緒にステージを作りあげていく作業はローディーの基本であり、また大きな喜びでもあります」

ローディーは次の段階に進もうとしている。

「おもしろくて、楽しくて、かっこいいステージを作るには、日本人らしいキメの細かさも必要です。ローディーがステージに見えていないようで見えている、日本古来のわび・さびの精神はサポートや演出にも出てくるんです。」

この仕事は、誰かが見ている

「ミュージシャンと同じくらい音楽を理解していないと、彼らが何を求めているのか、わからない」

ミュージシャンとの結びつきを強調するのは三島陵太郎さんだ。ローディーになったのは、二十歳のときだった。ミュージシャンになる夢を抱き、勉強だと思って始めた。よい音を作り上げるために、神経質にノイズを処理する。こういった小さなことの積み重ねがローディーとしての喜びにつながる。それが快感となり、プライドに結びつく。

ローディーの仕事を始めて三、四年目のときだ。自分の仕事を誰かが見ていると、実感した瞬間があった。

ある地方での公演時のこと。ライブが終了して、警備員に注意されても帰らない女性のお客さんがいた。三島さんたちは撤収作業を始めていた。そのとき、「スタッフの皆さん、どうもありがとうございました」と言いながら彼女が頭を下げた。

「ライブが終わって、拍手が起こる。そのうちの何人かは、私たちに向かって拍手してくれているんだよ」
隣で河原さんがそう話すと、三島さんがうなずいた。

「演奏の技術もその域に達していなければ、本当はプレイヤーの悩んでいることがわからないんです。自分がその域にいるかといえば、まだです。そこに達したいな、と思っているんですが」

そこまでの技術と知識を目指すローディー。ミュージシャンとの違いが気になった。

「楽器の知識などは、同等に近いかも知れません。ただ、創造力はミュージシャンならではのものでしょうね」

ミュージシャンと一緒にお客さんを満足させたい

ローディーの一番の仕事は、もちろんミュージシャンを支えることである。そんなローディーに向いているか、いないかは、ギターをミュージシャンに渡す動作ひとつにも表れるという。

「よいローディーの条件は、ミュージシャンから信頼されていることでしょう。だって、ミュージシャンの命である楽器を預けてくれるんですよ。社長である僕の言うことを聞かなくてもいいから、ミュージシャンの言うことに耳を傾ける。そこで信頼が築ければ、よいローディーだと思います。」

求められることは演奏面や楽器の知識だけでなく、メンタル面に及ぶこともある。河原さんは続けた。
「その日のコンディションによって、音がよかったり悪かったりする。たとえば、ボーカルの喉の調子が悪ければ、水を出してあげる。直接楽器とは関係なくても、それはローディーの仕事です。そこに気づかなければ意味がない。」

体調も含めてサポートすることで、よい音作りにつながっていく。ただし、ローディーがミュージシャンのイエスマンでもだめだとも加える。
「自分のスタイルを持ちながら、すべてにおいてミュージシャンを中心に考え、気を遣う。一方で自分もライブに参加しているという自覚も必要です。次の公演のために、ミュージシャンと一緒に悩んだりもする。それが大切だと思っています」そう話す三島さん。よい音作りを通じて、アーティストもお客さんも満足させたいという気持ちが伝わってくる。

話を聞き進めるうちに、今度ライブに行ったら、ギターを渡す人に注目したくなってくる。舞台裏にいる人たちに向け、拍手をいつもより大きく鳴らしたいと思う。

河原さんの音楽にかける思いが印象的だった。

「音楽は絶対になくならないし、それに付随する裏方の仕事もなくならない。技術が発達して、レコードや CD だけでなく、ダウンロードして音楽を聴く方法も選択できる時代になった。でも、技術がどんなに発達しようと、生の演奏には勝てない。生の音楽を支えていくのは、生の人間に他ならないと思っています」

HISTORY OF T.M.R. LIVE REVOLUTION 1996-2005

2006年6月 別注カドカワ総力特集西川貴教より

(株)チームアクティブ 斎藤健一さん

全員参加型エンターテイメントのきっかけになった年

97年といえばダンスが印象深いですね。いろんな曲に振り付けがあったり、アクションがあったり。西川くんはダンスリハを一生懸命やっていました。ターンを研究したり、テレンス・トレント・ダービーとか?プリンスか?というアクションしたりして(古っ!!)。「joker」ツアーの時、初めて譜面ができました。それまで行き当たりばったりの曲アレンジから共通言語で意思の疎通を図れるようになって。これは事件でしたね。

西川くんはとても敏感なアンテナみたいな人です。空気感とか、流れ、タイミングがすごく大事。だから、ステージ上でのやりとりはその辺りに気を使ってます。目と目が合って、表情を見て、あとはお互いにうなずくだけ。言葉にすると軽くなってしまうことや言わないから通じることもありますしね。

この年はガムシャラに前に進んだ感じですが、この先やれる自信や確信とかの手応えはしっかり残りました。ぶつかりながら一つの空気を作っていく、全員参加型エンターテイメントのきっかけになった年と言えると思います。

お仕事拝見

2006年3月4月号 [zi:]ジィーより

(株)チームアクティブ 川澄哲さん

前回に引き続き、”ローディー”のお仕事を紹介します。今回紹介するのは、ローディーの派遣会社に所属し、さまざまな現場でその能力を提供している、いわゆる「プロのローディー」さんです。そこで今回は、「プロとしての仕事」とはどういうものかを中心に、話を伺いました。

まず最初に、ローディーの仕事内容について教えて欲しいのですが。

テック、テクニシャンとも呼ばれるんですが、楽器、機材のセッティングやチューニングなど楽器に関わるいろいろな仕事をします。ギター担当なら、ギター・テック、ベース担当ならベース・テックって呼ばれるんですけど。

ちなみに川澄さんは?

僕は、ギター・テックがメインです。ただ、バンドの規模にもよるんですが、ひとりでギターとベースを担当したり、ということも多いので、基本的な部分は、どの楽器でも一通り出来ますけど。

具体的には、どういう作業があるんですか?

たとえば、あるバンドが東京ドームでライブをやるとします。でも、会場の規模が大きくなれば、ライブ当日にセッティングから何から全部をやるっていうのは無理ですよね?だからって、メンバーが前日から入って、機材のセッティングから全部をやるかっていうと、そうもいかない。そこで、俺達が事前に行って、会場にあった立ち位置に機材をセッティングしたり、ライブが出来る状態に音を整えたりするんです

ちなみに、バンドやミュージシャン個人についている、いわゆるボーヤと呼ばれる人と、川澄さんのようにお仕事として数バンドにたずさわる方とがいますが、やっぱり仕事内容は違うんですか?

違いますね。ボーヤって言うのは、ミュージシャン個人について学ばせてもらっている人たちで、いわば師匠と弟子のような関係なんです。でも、ローディーは師匠と弟子という関係ではなくて、アーティストと同じか、よりプラスαの技術が必要なんです。

プラスαっていうのは?

さっきのライブの話で言うと、僕達が事前の準備をする場合、メンバーが入ってきていきなり本番が出来る、っていうレベルまで音作りをしておくのがプロです。どの会場でも、いつも同じ音が出るわけではないんですよ。たとえば最初に音を出してみた時に、いつもよりノイズが多めだとします。そしたら、そのノイズを減らす為に、機材のコンセントをさす向きを変えたりだとか、いろいろな技を使って、アーティストが好む1番いい音を作るのがプロだと思うんですよ。

楽器や機材に関する知識は、アーティスト以上に必要なんですね。それに、アーティストの好みの音も把握しないとできないですよね?

そうなんです。そこが難しいところで、その人の好みや弾き癖を把握しないとできないんです。だから、僕は主だった曲は全曲コピーしてますね。で、ライブ前の仕込みの段階で、曲を演奏しちゃうんですよ。そうすると、自分たちも音を作りやすいし、それだけじゃなくて、PAさんなんかも、すごく決めやすくなるんです。

そういうのって、ローディーさんはみんなやるんですか?

いや、みんなではないです。俺は、自分が楽器を演奏するのが好きっていうのもありつつ、昔U2のテックさんがそうするっていうのを聞いて、それでやりはじめたんです。やっぱりやってみると全然違いますね。癖なんかも、すごく分かりやすくなりますよ。

すごい!そこまでやれるからこそ、信頼もされるんですね。あと、もちろんライブだけじゃなく、レコーディングにも行くんですよね?

はい。平たく言うと、メンバーが楽器を使う時は必ず行きます。

じゃあ、アーティストと一緒にいる時間って、すごく長くなりますよね?それって、人間的な部分―― 信頼関係や気が合う合わない―― もすごく重要になってくるんじゃないですか?

もうね、そこは本っ当に大事です。そこが原因で、途中でクビになる人もいるぐらいですからね。テクニックももちろんですが、やっぱり人間関係は一番大切だと思います。信頼関係が築けなければ、この仕事はできないですよ。だから僕は、楽器どうこうっていうよりもまず、人としての付合いという部分を大切に考えてますね。

では最後に、この仕事でやりがいを感じるのはどんな部分ですか?

人によってやりがいは違うと思いますけど、バンドと共に自分が大きくなっていけるところと、バンドの成長を見られることですね。

影の大役ローディー現場半日密着取材

2003年6月 Musicman-net Qsicman追跡レポート!ローディー編

株式会社チームアクティブ 伊藤陽介

欧米ではコンサートやレコーディングに欠かせないスタッフとして、また何よりミュージシャンにとって一番身近で絶対の存在である「ローディー」。国内ではまだなじみ薄い影の大役に半日密着取材!

ローディーの仕事をはじめて、どのくらいなんですか?

この会社に入って半年過ぎたぐらいですね。

この仕事を選んだきっかけは何だったんですか?

もともと高校の時に趣味程度にバンドをやっていたりしたんですけど、その頃、コンサートのバイトをやっていて。これが色んな現場に派遣されるバイトで、地元のライブハウスで機材の搬入を手伝ったりとか、ツアーなんかでバンドがまわって来たりするじゃないですか。そういうのを現場で手伝ったりするバイトがあったんです。そのときに音楽の仕事に目覚めたっていうか・・・。その仕事自体、全然苦に思うところもなくて、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。

その時にローディーという仕事を知ったんですか?

それがまだ、仕事として存在してるっていうのは知らなかったんですよ。

いつ頃、仕事として意識したんですか?

そのあと、楽器の技術を勉強したくて音響の専門学校に入ったんですけど。一番初めはPAや音響方面の仕事をやりたいなと思ってたんです。実際、専門では1年の時に主に3つの仕事の勉強をしたんですよ。レコーディングとPAと、放送のMAとかだったりするんですけど。それで2年に上がってコースを選ぶんですけど、そのころには今度はCDを作りたくて、レコーディングに興味を持ってしまって、レコーディングの勉強もしてはいたんですけど、気づいたら、卓をいじる側ではなくて、いつも奥のブース側で楽器を触ったりしてて(笑)。

楽器をいじったりする方が相当好きだったんですね。

そうですね。セッティングを手伝ったりとかするのがとにかく楽しかったんですよ。気が付いたら、楽器を触る方に回っていたりして・・・。楽器がやっぱり好きなんだなぁと思いますね。行き着いたところがここでした。その時はまだ全然わかんなかったんで。それで、楽器をいじったり、アーティストについたりする仕事はないのかなぁと思って探して・・・。僕は実家が名古屋なんですけど、高校の頃、あるアーティストのライブビデオを見ていて、その映像の中で、メイキングのシーンが入っていて、そこにアーティストと仲良く話しながらエフェクターとかを触っているスタッフがいたんです。そのシーンが印象深く頭に残っていたんで、もう一回改めて見なおしてみて、この人は何なんだ?こんな仕事があるのか?と。そういう楽器を扱う仕事はなんなのかと思ったりしてたんです。

それで仕事はどうやって探したんですか?

そのうち就職しなくちゃいけない時期がきて、就職相談室に色んな本があるので、そこで結構探したりしましたね。で、楽器のセッティングとかする仕事ってことで「ローディー」っていう仕事があることをたまたま知ったんですよ。でも、どんな会社があるかとかはまだ全くわからなくて。そんなとき学校の先生から、色んな音楽の仕事とか会社をインターネットでも調べられるからっていって ホームページのアドレスを教えてもらったんですよ。それがMusicman-NETだったんです。

それでQsicmanの求人に応募されたんですよね?

はい、もちろんしたんですけど。一度、今の会社が応募をしていたのを見たんですけど、経験者しかダメってことで、僕は初心者だったので、だめだったんですよ。それでも一応履歴書は出してはいたんですけど、やっぱり無理で採用されなかったんです。それから専門を出て半年ぐらいずっと就職活動をしてて、相変わらずMusicman-NETで探していて、いったん別の会社に就職したんです。

それが今のアクティブの関連会社でハーフトーン系列の会社なんですが、その会社に一年ぐらい入って。仕事は一応「ローディー」という名目ではあったんですけど、その会社自体がイベントを主催したりしてたんで、ローディーの仕事もしたはしたんですけど、舞監補佐みたいな感じで、舞台の転換を手伝ったりとかステージを作ったりだとかやってたんです。

それじゃあ、結構この道は長いんですね。

でも今とは全く違ってて、前やってた事はやっぱり自分の中では全然甘くて。今はあんまり役に立ってない部分もありますし・・・。それにあと、まだ全然自分の中では、この仕事は慣れてないんで・・・。機材はどんどん新しくなっていくんで、機材の使い方の勉強は欠かせないですし、色んな現場に出て、もっと勉強していきたいなって思ってますよ。

これはマズかったっていう失敗とかやっちゃったことってありますか?

ありますね~。マイクスタンドを間違って片づけてしまったっていうのがありますね。ライブの頭に使って、終わったら後ろに下げちゃうんですよ。真ん中ぐらいにもう一回マイクスタンドを使う曲があって、下げちゃってたんで、マイクスタンドがない状態になっちゃって、かなり焦って急いで取りに行ったりとか・・・。

そういうときは先輩の方に怒られちゃうんですか?

怒られることは、正直、しょっちゅうありますね(笑)僕の中では普通にやってるつもりなんですけど、遅いだったりどんくさいだったり、のろのろするな、とか。で、逆に機敏にやりすぎても周りをうろちょろするなって言われちゃいますから。常に状況が見えてないとだめなんです。

怒られてへこんじゃうことってありますか?

う~ん。まぁ僕の中ではなんともいえないですね。でも、やっぱり第一に音楽が好きだっていうのがあるし、音楽が好きじゃないとやっていけないなと思いますね。怒られてヘコむ部分もあるだろうし。ただ僕の場合は、ヘコんでても仕事になんないんで。やっぱり言われてることは、全部すごく的確な事を言ってるんで。それは全部自分の中で足りない部分だなと思って自分でおさめてます。なので、仕事中に凹むってことはあまりないですけど。けど、やらなくちゃいけない部分を自分でわかっちゃいるのに言われたりすると、現場では凹みませんけど、家帰ったらやっぱ凹みますね~(笑)

やりにくいこととか、それこそムカツクことってあるんですか?

そういう感覚はまったくないですね。機材を扱う上で、その扱い方を理解してなくちゃいけないんで・・・。たとえば、どんな音が出るかとか、ドラムでいえば、この皮を張ればどういう音がでるとかそういう知識がまだまだなんで自分にむかつくときはありますけど。

箱の大・小によって気にすることは変わったりするんですか?

箱が大きくても小さくてもやることは基本的にはおんなじなんで。あまり変わらないと思いますね。

お客さんとしてライブに行っていた頃と比べて、ローディーとして仕事をする上で、気持ち的に変わったこととかってありますか?

あまりこの仕事って見えない部分の仕事だと思うんですよ。PAだったり照明だったりとかが一番メインにあって、基本的にこの仕事は裏方だったりするんで、でも裏は裏で楽器を扱ってるんで、すごい大事っていうか、なくちゃはじまらないっていう仕事だと思うんですよ。アーティストのケアだったり、コンディションだったり、アーティストに一番身近にいる存在でもあるんで、それが大事だってことを感じます。

今日はお仕事を見学させていただいたんですが、かなりテキパキとやられてましたよね。相当重そうな機材を運んでましたけど、よく体力がもちますね・・・。

いやー早くやらなくちゃいけないとか思って、テンパってやってましたよ~。ギター・ベースがいて、ドラムが僕の担当なんですが、自分が遅らせちゃいけないんで、現場ではいつも必死ですね。

楽器に対して担当が決まってるんですか?

僕自身が担当してるバンドっていうのはまだ今日のバンドしかないんですけど。そこではドラムを担当してるんです。ドラムはセッティングだけじゃなくてチューニングもあるんで、僕はまだ全然そこまでいってないんですけど、今、ついているドラマーの方っていうのが僕が言わなかったら本人が全部一人でやってしまうような方なんで、ほんとに色々勉強させてもらいつつやってます。

今日の仕事の流れはどんな感じなんですか?

今日の場合だと3時に会場に入って、小屋側に置いてあって使わないやつをバラして、まだ舞台ができてない状態なんで、ある程度できるまでセッティングをやったりして、あとは本人が機材持ってるんで、機材待ちなんです。で、機材がきたら、車から降ろしてセッティングですね。セッティングが終わったら、最終チェックをやります。

機材のセッティングで気をつけてることって何ですか?

モニターの音のかえりとか外音とか気にしたりしますね。もうちょっとこうしたらいいかな、とか確認したり。やっぱり、人によっていろいろあると思うんですよ。僕の場合は、一応本人の楽器や機材を扱うわけじゃないですか。結構慎重に扱ってますね。それから、僕だけじゃなくて、まわりの人もセッティングしてるんで、なるべく邪魔しないように気をつけたり。

ライブ中はどんなことを気にしてるんですか?

トラブルが起きないか目を光らせていますね。何かおきないか、常に目を光らせて見てる感じです。ステージで基本的に下手側、ベース側にいるんで、ベースのケーブルがどっかで引っかかったり抜けたりしてないか、とかドラムもトラブルがおきてないか、というのを気にしてやってます。

それで、ライブが終わっても機材の片付けがあったりするんですよね。本当に長丁場で大変ですよね。今日みたいに狭い階段のあるところだと機材の搬入も楽じゃないですよね。

そうですね。すぐに撤収なんで、ばらしてまた元に戻してって感じですね。でも全然苦じゃないですね。まぁ好きじゃないとやってけないかなぁ、と思いますけどね。

先ほど、上の方とお話したんですけど、伊藤さんの人柄をとても評価してるっていう話を伺ってたんですよ。私もお話していて清々しい気分になるというか・・・いいですよね。なんというか、やっぱり機材を扱うという以前に、コミュニケーションは重要なんですよね。

あ~(照れ笑い)。僕自身、まず仕事をやる上で アーティストの人たちと楽しくやれたらいいなっていうのがあって。それをやる上ではどうしてもやっぱり気を遣わなくてはいけない部分が多くて、もちろんアーティストのコンディションの問題もあって、ヘコんでた時にライブをやったりしたら、音の出方とかも全く変わってきちゃうんで、どういうふうに持ち上げたらいいかなとか世間話とかしたり、簡単なことから体をほぐしてもらえたらいいなと思ったりします。

本番前にアーティストが緊張したりしてると・・・?

それはわかりますね。くだらない話とかでもしてなんとか緊張をほぐしてあげようかと思います。やっぱりアーティストの信頼が一番大事ですね。

仕事をしていく上で、いつも心がけていることって何ですか?

場の雰囲気ですね。アーティストの人が気持ちよくやれるようにやらせてあげるっていうか、どれだけコンディションをもっていってあげられるか、だったり。もちろん一回一回の仕事が大事なんで、自分で資料として残していきたいんで、ノートに書いてメモを取ったり、違う現場に出たら、うちのスタッフがいるんで、その一員として、どれだけやってる人たちをサポートしてあげれるか、自分の中だったら何をやれるのか、現場の1チームとしてどれだけ現場を盛り上げていけるか、っていうのを考えながら、無駄にしないよう一日一日を大事にしていきたいですね。

やりがいを感じる瞬間ってどんな時ですか?

やっぱり終わった後ですね~。ライブが終わった後に、客席を見て、お客さんが笑顔で帰っていったり今日はよかったね、ってボソボソって言ってるのを聞いたり、機材を全部詰め終えてアーティストに挨拶して、今日はありがとうございましたと言うときが一番やりがいを感じます。

ちっぽけなことかもしれませんけど、今の僕にはアーティストに顔を覚えてもらったとき、仕事で「よろしくね」と任された時、オーディエンスからアンコールがあったとき、笑顔で楽しかったねと言いながらお客さんが帰っていくのを見たときは、やりがいがあるというか、やっててよかったなぁーと思います。今日のバンドに関していえば、バンド自体も、人間的にもすごくいい人たちで、ある意味、友達感覚の所もあるし、でもそれではいけないんで、どこでくぎって仕事としてやるかっていうのを気にしています。

僕はまだ駆け出しなんで、一人いても全然役に立たないんですけど、やっぱり、やっててアーティストに喜ばれたり、任されたり、自分の中ではまだあんまりないんで、もっと一緒に成長していけたらいいかなぁと思ってるんですけどね。

ハードな部分ってどんな所ですかね?

やっぱり体力的というよりは、技術や知識面、あと精神面だと思いますね。ライブが始まる前の緊張感だったり、体力よりも自分の中での負けん気みたいな精神力がしっかりしてれば、どんな仕事でも全然やれないことはないと思うんですよ。ホールとか大きな現場になるとバイト君がいるんで少しは楽だったりするんですが、こういうライブハウスだと 全部自分だけでやらなくちゃいけないんで、細い階段だったりすると大変といえば大変ですね。

将来的にはインストゥルメントテクニシャンに?

いや、僕は機材のテクニックうんぬんというより、アーティストのライブっていう生の仕事に最初から最後まで、機材の搬入から片付けまでを全部自分が携われる方が、やりがいがあっていいですね。

これからの目標みたいなものってありますか?

いまのところ、将来どんなことをやりたいとか全く想像できないんで、今を、今を、っていうのが大事というか精一杯です。今日一日やってどれだけ自分の中に知識として身にできるかっていうのが大事で。ライブっていう生の現場で、はじまる前は緊張しますし。

自分の理想を守ってたとしても、現実は自分ができることは限られているし、正直、理想というのはないっちゃないんですよ。色んな現場に行って、同じスタッフの人たちを見たりして、自分の動きがとろかったりすると、そう言う風になりたいなぁと強く思いますね。

ジレンマがあったりするんですね。

そうですね。上の人にはすぐに見抜かれますけどね、そういう部分は。

まだお仕事中で、これからライブの本番があるわけですけど、普段お休みの日は何してらっしゃるんですか?

休みの日は遊んじゃいますね。友達と飲みに行ったりとか。こういう仕事ってあんまり認知されてないじゃないですか。だから一から説明しなくちゃいけないんですけど(笑)

みんな音楽がやりたいっていう人ばっかりなんで、で、まわりも音楽業界に就職してたりするんで、真剣に話を聞いてくれるし、こないだの現場はどうだった、とか色々と情報交換をしたりしますね。

自分が携わったアーティストが売れるとやっぱり嬉しいですよね。

はい。テレビで流れたり、ラジオで流れたり、CD出したりすると、やっぱすごく嬉しいですね。

ローディーを目指している方々にアドバイスがあったら、お願いします。

アドバイスですかー?僕自体が駆け出しっていうのもあると思うんで。難しいですね~。やっぱりどんな仕事もそうだと思うんですけど、入ってやってみないとわかんない部分があると思うんですよ。

厳しいかどうかっていったら、どの仕事も厳しいと思うし、とりあえず自分から動いて何の仕事でもいいんでやってみて、それで自分の中で合ってないなと思ったら辞めることもあるだろうし、それがほんとに好きだったらやればいいと思うし。

ローディーとして大事なことはズバリ一言で言うと?

なんだろう。まず第一に機材を預かって全部任されるんで、その取り扱いが大事だと思うんですよ。あと、コンディションですね。機材のコンディションもあるし、アーティスト自身のコンディションをサポートしてケアやフォローをしてあげるっていう、それが僕の中では一番大事かなと思いますね。

コンサートを創っているのはアーティストだけじゃない!

2001年3月13日発行 シンコーミュージックMOOK「音楽の全仕事2002」より

(株)チームアクティブ 代表取締役 河原真澄さん

海外ではツアースタッフ全員を”ローディー”と呼ぶ。
日本ではなぜ、違う使われ方をしているのか?
その答えは、音楽に魅せられ、日本のコンサートにこだわり続けて、
ついに”日本型ローディー”を確立した一人の男の夢が握る。

日本独自のローディーが、コンサート制作を変える

コンサートツアーの楽器や機材を管理し、そのセッティングやチューニングなどを担当するスタッフを“ローディー”と言うが、実はこの言葉、使い方が間違っている。欧米でローディーとはツアースタッフ全員を指す名称で、PAや照明なども含まれている。この“ローディー”の日本的な意味を普及させたのが、河原社長である。

「それどころか、ミュージシャンもアーティストも。ツアーバスや11トン・トラックに乗って移動する全員がローディーですよ(笑)。でもね、僕がこの名称を使ったことには、深いわけがあるんです」
チームアクティブは間もなく設立10年。会社組織になる前はローディーの集団であり、そのチームが結成されてから17~18年になる。会社登記はチームアクティブより早いところもあるが、日本語で組織的にこの仕事を始めたのは、河原社長がまさに草分け的な存在だ。

河原さんがローディーを始めた頃、この仕事は”ボーヤ”の人がほとんどだった。ボーヤとはバンド・ボーイ。つまり、ミュージシャンの楽器をならうために付き人として働く人のことを指している。

「僕が22歳ぐらいの時に、いろんなアーティストの現場に行って、そういう人たちの動きを見てね、これってもっとちゃんとできる仕事だよなって思ったんです。その頃、神宮球場で大きなイベントがあって、海外からグリーンベレーというローディー・チームが来日したことがある。

これが、めちゃくちゃかっこいい。軍服来て、グリーンのベレー帽かぶって、全員インカム刺してるんです。で、専用の荷が着くと、マーシャルから何から全部分解してチェック。サウンドチェックの時も、ダメだって差し替えられたアンプなんかを全部バラして見ているわけです。本当の技術マンがそこに来ていたわけ。欧米で”テック”と呼ばれる人たちだったんですよ」

このテックが、本来ならボーヤに変わる言葉になるはずだった。しかし、テックとは各楽器を担当するテクニシャンのこと。ドラムなら“ドラムテック”、ベースなら“ベーステック”というスタイルになっている。各パートにすべて起用できるほど予算的な余裕は、日本の業界にはない。
「当時僕は白井貴子&クレイジーボーイズを担当していたけど、彼女にしても、デビュー当初は僕一人だけでツアーをまわっていました。ローディーが二人起用できるのは、ミディアム・ヒットぐらいしていないとだめだった。日本は欧米と違って予算が少ないし、そこにかけられる人件費も限られている。いわゆる“マルチ”でローディーという業務をしないと、理屈に合わない。ここがポイントでした。要するに、ギターだけ、ベースだけ、ドラムだけっていうのではなく、全部のことをきちんとできる。そういうことが一つの組織としてできあがっていけば、コンサートの制作自体がもっと変わるんじゃないかと思ったんです」

ここに日本型のテクニシャン集団が誕生した。でもこの形態を、”テック”と呼ぶのはどこか変だ。

「マルチのケアーは、やはりテックじゃない。仲間と話し合ったとき、日本でもちらほら使われだしていた”ローディー”が浮かんだんです。確かに、正確な使い方じゃないけど、自分たちでこの言葉を普及させてみようということになった。ローディには、”縁の下の力持ち”、”影武者”、”黒子”っていうイメージがあるでしょう。みんなこの言葉に自負を持って、自分たちの可能性を真剣に考えたんです」

人間性、メンタルな部分がローディーに求められる

今やステージ上のミュージシャンが、エフェクターを操作することは少ない。ローディーがすべて、見えない場所で操作しているからだ。エフェクターの拘束から離れて、ミュージシャンは自由にステージを動き回れるようになる。今はごく当たり前の、この作業も当初は他のスタッフになかなか認めてもらえず、その作業を確立していった一人が河原さんである。

「男性は男性なりの、女性は女性なりのステージ演出ってあるじゃないですか。女性アーティストなら見た目も華麗なステージがいいし、シンプルな構成のステージにローディーを呼び寄せる男性アーティストってやっぱりカッコいいよ。僕がエフェクターを操作すれば、ミュージシャンは自由に動けて迫力あるステージになる。ギター弾いているだけでディストーションやフランジャーがかかるのって、海外ではあたりまえだったけど、日本ではまだまだ認知もあまかった。白井さんのコンサートで僕がその準備をしていると、事務所の社長がやってきて“河原、これで日本の音楽も変わるぞ!”って言ってくれたんです。嬉しかったですね」

河原さんたち、初期からのメンバーの活躍で、チームアクティブは第二段階に入っている。今ではテックとして働くスタッフも多く、新しい仕事も生まれてきはじめた。

「この世界もコンピュータの進出が目覚ましくて、ミュージシャンはコンピュータの事も考えなくちゃいけないので、演奏に専念できなくなってきているんです。打ち込みのプログラミングもありますよね。それで、マニピュレートとセッティングが一緒にできるローディー件マニピュレーターが求められてきたんです。そうなると、そういう事って技術だけじゃなくてセンスも必要だし、プログラミングとなるとクリエイター的な部分も要求されてくるんですよ」

河原さんには大きな夢が二つある。一つは、現在80数名のチームアクティブのスタッフを、テックのレベルで100人にすること。もう一つは、チームアクティブが築き上げた”日本型ローディー”のスタイルで、本場アメリカのエンターテイメントビジネスに乗り込むことである。どちらの夢も、実現の可能性は極めて高いものだ。

「ローディーは、良いミュージシャンに出会って、良い知識をいただいて、その知識を知らないミュージシャンに手渡す役割を持っていると思います。この仕事、技術だけじゃなく人間性も絶対に大切なんです。人が人に求められて仕事をするんだから、人に応えられるだけメンタルな部分を磨かないと」

河原さんの目指すものは大きい。