2003年6月27日 teamactive

影の大役ローディー現場半日密着取材

2003年6月 Musicman-net Qsicman追跡レポート!ローディー編

株式会社チームアクティブ 伊藤陽介

欧米ではコンサートやレコーディングに欠かせないスタッフとして、また何よりミュージシャンにとって一番身近で絶対の存在である「ローディー」。国内ではまだなじみ薄い影の大役に半日密着取材!

ローディーの仕事をはじめて、どのくらいなんですか?

この会社に入って半年過ぎたぐらいですね。

この仕事を選んだきっかけは何だったんですか?

もともと高校の時に趣味程度にバンドをやっていたりしたんですけど、その頃、コンサートのバイトをやっていて。これが色んな現場に派遣されるバイトで、地元のライブハウスで機材の搬入を手伝ったりとか、ツアーなんかでバンドがまわって来たりするじゃないですか。そういうのを現場で手伝ったりするバイトがあったんです。そのときに音楽の仕事に目覚めたっていうか・・・。その仕事自体、全然苦に思うところもなくて、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。

その時にローディーという仕事を知ったんですか?

それがまだ、仕事として存在してるっていうのは知らなかったんですよ。

いつ頃、仕事として意識したんですか?

そのあと、楽器の技術を勉強したくて音響の専門学校に入ったんですけど。一番初めはPAや音響方面の仕事をやりたいなと思ってたんです。実際、専門では1年の時に主に3つの仕事の勉強をしたんですよ。レコーディングとPAと、放送のMAとかだったりするんですけど。それで2年に上がってコースを選ぶんですけど、そのころには今度はCDを作りたくて、レコーディングに興味を持ってしまって、レコーディングの勉強もしてはいたんですけど、気づいたら、卓をいじる側ではなくて、いつも奥のブース側で楽器を触ったりしてて(笑)。

楽器をいじったりする方が相当好きだったんですね。

そうですね。セッティングを手伝ったりとかするのがとにかく楽しかったんですよ。気が付いたら、楽器を触る方に回っていたりして・・・。楽器がやっぱり好きなんだなぁと思いますね。行き着いたところがここでした。その時はまだ全然わかんなかったんで。それで、楽器をいじったり、アーティストについたりする仕事はないのかなぁと思って探して・・・。僕は実家が名古屋なんですけど、高校の頃、あるアーティストのライブビデオを見ていて、その映像の中で、メイキングのシーンが入っていて、そこにアーティストと仲良く話しながらエフェクターとかを触っているスタッフがいたんです。そのシーンが印象深く頭に残っていたんで、もう一回改めて見なおしてみて、この人は何なんだ?こんな仕事があるのか?と。そういう楽器を扱う仕事はなんなのかと思ったりしてたんです。

それで仕事はどうやって探したんですか?

そのうち就職しなくちゃいけない時期がきて、就職相談室に色んな本があるので、そこで結構探したりしましたね。で、楽器のセッティングとかする仕事ってことで「ローディー」っていう仕事があることをたまたま知ったんですよ。でも、どんな会社があるかとかはまだ全くわからなくて。そんなとき学校の先生から、色んな音楽の仕事とか会社をインターネットでも調べられるからっていって ホームページのアドレスを教えてもらったんですよ。それがMusicman-NETだったんです。

それでQsicmanの求人に応募されたんですよね?

はい、もちろんしたんですけど。一度、今の会社が応募をしていたのを見たんですけど、経験者しかダメってことで、僕は初心者だったので、だめだったんですよ。それでも一応履歴書は出してはいたんですけど、やっぱり無理で採用されなかったんです。それから専門を出て半年ぐらいずっと就職活動をしてて、相変わらずMusicman-NETで探していて、いったん別の会社に就職したんです。

それが今のアクティブの関連会社でハーフトーン系列の会社なんですが、その会社に一年ぐらい入って。仕事は一応「ローディー」という名目ではあったんですけど、その会社自体がイベントを主催したりしてたんで、ローディーの仕事もしたはしたんですけど、舞監補佐みたいな感じで、舞台の転換を手伝ったりとかステージを作ったりだとかやってたんです。

それじゃあ、結構この道は長いんですね。

でも今とは全く違ってて、前やってた事はやっぱり自分の中では全然甘くて。今はあんまり役に立ってない部分もありますし・・・。それにあと、まだ全然自分の中では、この仕事は慣れてないんで・・・。機材はどんどん新しくなっていくんで、機材の使い方の勉強は欠かせないですし、色んな現場に出て、もっと勉強していきたいなって思ってますよ。

これはマズかったっていう失敗とかやっちゃったことってありますか?

ありますね~。マイクスタンドを間違って片づけてしまったっていうのがありますね。ライブの頭に使って、終わったら後ろに下げちゃうんですよ。真ん中ぐらいにもう一回マイクスタンドを使う曲があって、下げちゃってたんで、マイクスタンドがない状態になっちゃって、かなり焦って急いで取りに行ったりとか・・・。

そういうときは先輩の方に怒られちゃうんですか?

怒られることは、正直、しょっちゅうありますね(笑)僕の中では普通にやってるつもりなんですけど、遅いだったりどんくさいだったり、のろのろするな、とか。で、逆に機敏にやりすぎても周りをうろちょろするなって言われちゃいますから。常に状況が見えてないとだめなんです。

怒られてへこんじゃうことってありますか?

う~ん。まぁ僕の中ではなんともいえないですね。でも、やっぱり第一に音楽が好きだっていうのがあるし、音楽が好きじゃないとやっていけないなと思いますね。怒られてヘコむ部分もあるだろうし。ただ僕の場合は、ヘコんでても仕事になんないんで。やっぱり言われてることは、全部すごく的確な事を言ってるんで。それは全部自分の中で足りない部分だなと思って自分でおさめてます。なので、仕事中に凹むってことはあまりないですけど。けど、やらなくちゃいけない部分を自分でわかっちゃいるのに言われたりすると、現場では凹みませんけど、家帰ったらやっぱ凹みますね~(笑)

やりにくいこととか、それこそムカツクことってあるんですか?

そういう感覚はまったくないですね。機材を扱う上で、その扱い方を理解してなくちゃいけないんで・・・。たとえば、どんな音が出るかとか、ドラムでいえば、この皮を張ればどういう音がでるとかそういう知識がまだまだなんで自分にむかつくときはありますけど。

箱の大・小によって気にすることは変わったりするんですか?

箱が大きくても小さくてもやることは基本的にはおんなじなんで。あまり変わらないと思いますね。

お客さんとしてライブに行っていた頃と比べて、ローディーとして仕事をする上で、気持ち的に変わったこととかってありますか?

あまりこの仕事って見えない部分の仕事だと思うんですよ。PAだったり照明だったりとかが一番メインにあって、基本的にこの仕事は裏方だったりするんで、でも裏は裏で楽器を扱ってるんで、すごい大事っていうか、なくちゃはじまらないっていう仕事だと思うんですよ。アーティストのケアだったり、コンディションだったり、アーティストに一番身近にいる存在でもあるんで、それが大事だってことを感じます。

今日はお仕事を見学させていただいたんですが、かなりテキパキとやられてましたよね。相当重そうな機材を運んでましたけど、よく体力がもちますね・・・。

いやー早くやらなくちゃいけないとか思って、テンパってやってましたよ~。ギター・ベースがいて、ドラムが僕の担当なんですが、自分が遅らせちゃいけないんで、現場ではいつも必死ですね。

楽器に対して担当が決まってるんですか?

僕自身が担当してるバンドっていうのはまだ今日のバンドしかないんですけど。そこではドラムを担当してるんです。ドラムはセッティングだけじゃなくてチューニングもあるんで、僕はまだ全然そこまでいってないんですけど、今、ついているドラマーの方っていうのが僕が言わなかったら本人が全部一人でやってしまうような方なんで、ほんとに色々勉強させてもらいつつやってます。

今日の仕事の流れはどんな感じなんですか?

今日の場合だと3時に会場に入って、小屋側に置いてあって使わないやつをバラして、まだ舞台ができてない状態なんで、ある程度できるまでセッティングをやったりして、あとは本人が機材持ってるんで、機材待ちなんです。で、機材がきたら、車から降ろしてセッティングですね。セッティングが終わったら、最終チェックをやります。

機材のセッティングで気をつけてることって何ですか?

モニターの音のかえりとか外音とか気にしたりしますね。もうちょっとこうしたらいいかな、とか確認したり。やっぱり、人によっていろいろあると思うんですよ。僕の場合は、一応本人の楽器や機材を扱うわけじゃないですか。結構慎重に扱ってますね。それから、僕だけじゃなくて、まわりの人もセッティングしてるんで、なるべく邪魔しないように気をつけたり。

ライブ中はどんなことを気にしてるんですか?

トラブルが起きないか目を光らせていますね。何かおきないか、常に目を光らせて見てる感じです。ステージで基本的に下手側、ベース側にいるんで、ベースのケーブルがどっかで引っかかったり抜けたりしてないか、とかドラムもトラブルがおきてないか、というのを気にしてやってます。

それで、ライブが終わっても機材の片付けがあったりするんですよね。本当に長丁場で大変ですよね。今日みたいに狭い階段のあるところだと機材の搬入も楽じゃないですよね。

そうですね。すぐに撤収なんで、ばらしてまた元に戻してって感じですね。でも全然苦じゃないですね。まぁ好きじゃないとやってけないかなぁ、と思いますけどね。

先ほど、上の方とお話したんですけど、伊藤さんの人柄をとても評価してるっていう話を伺ってたんですよ。私もお話していて清々しい気分になるというか・・・いいですよね。なんというか、やっぱり機材を扱うという以前に、コミュニケーションは重要なんですよね。

あ~(照れ笑い)。僕自身、まず仕事をやる上で アーティストの人たちと楽しくやれたらいいなっていうのがあって。それをやる上ではどうしてもやっぱり気を遣わなくてはいけない部分が多くて、もちろんアーティストのコンディションの問題もあって、ヘコんでた時にライブをやったりしたら、音の出方とかも全く変わってきちゃうんで、どういうふうに持ち上げたらいいかなとか世間話とかしたり、簡単なことから体をほぐしてもらえたらいいなと思ったりします。

本番前にアーティストが緊張したりしてると・・・?

それはわかりますね。くだらない話とかでもしてなんとか緊張をほぐしてあげようかと思います。やっぱりアーティストの信頼が一番大事ですね。

仕事をしていく上で、いつも心がけていることって何ですか?

場の雰囲気ですね。アーティストの人が気持ちよくやれるようにやらせてあげるっていうか、どれだけコンディションをもっていってあげられるか、だったり。もちろん一回一回の仕事が大事なんで、自分で資料として残していきたいんで、ノートに書いてメモを取ったり、違う現場に出たら、うちのスタッフがいるんで、その一員として、どれだけやってる人たちをサポートしてあげれるか、自分の中だったら何をやれるのか、現場の1チームとしてどれだけ現場を盛り上げていけるか、っていうのを考えながら、無駄にしないよう一日一日を大事にしていきたいですね。

やりがいを感じる瞬間ってどんな時ですか?

やっぱり終わった後ですね~。ライブが終わった後に、客席を見て、お客さんが笑顔で帰っていったり今日はよかったね、ってボソボソって言ってるのを聞いたり、機材を全部詰め終えてアーティストに挨拶して、今日はありがとうございましたと言うときが一番やりがいを感じます。

ちっぽけなことかもしれませんけど、今の僕にはアーティストに顔を覚えてもらったとき、仕事で「よろしくね」と任された時、オーディエンスからアンコールがあったとき、笑顔で楽しかったねと言いながらお客さんが帰っていくのを見たときは、やりがいがあるというか、やっててよかったなぁーと思います。今日のバンドに関していえば、バンド自体も、人間的にもすごくいい人たちで、ある意味、友達感覚の所もあるし、でもそれではいけないんで、どこでくぎって仕事としてやるかっていうのを気にしています。

僕はまだ駆け出しなんで、一人いても全然役に立たないんですけど、やっぱり、やっててアーティストに喜ばれたり、任されたり、自分の中ではまだあんまりないんで、もっと一緒に成長していけたらいいかなぁと思ってるんですけどね。

ハードな部分ってどんな所ですかね?

やっぱり体力的というよりは、技術や知識面、あと精神面だと思いますね。ライブが始まる前の緊張感だったり、体力よりも自分の中での負けん気みたいな精神力がしっかりしてれば、どんな仕事でも全然やれないことはないと思うんですよ。ホールとか大きな現場になるとバイト君がいるんで少しは楽だったりするんですが、こういうライブハウスだと 全部自分だけでやらなくちゃいけないんで、細い階段だったりすると大変といえば大変ですね。

将来的にはインストゥルメントテクニシャンに?

いや、僕は機材のテクニックうんぬんというより、アーティストのライブっていう生の仕事に最初から最後まで、機材の搬入から片付けまでを全部自分が携われる方が、やりがいがあっていいですね。

これからの目標みたいなものってありますか?

いまのところ、将来どんなことをやりたいとか全く想像できないんで、今を、今を、っていうのが大事というか精一杯です。今日一日やってどれだけ自分の中に知識として身にできるかっていうのが大事で。ライブっていう生の現場で、はじまる前は緊張しますし。

自分の理想を守ってたとしても、現実は自分ができることは限られているし、正直、理想というのはないっちゃないんですよ。色んな現場に行って、同じスタッフの人たちを見たりして、自分の動きがとろかったりすると、そう言う風になりたいなぁと強く思いますね。

ジレンマがあったりするんですね。

そうですね。上の人にはすぐに見抜かれますけどね、そういう部分は。

まだお仕事中で、これからライブの本番があるわけですけど、普段お休みの日は何してらっしゃるんですか?

休みの日は遊んじゃいますね。友達と飲みに行ったりとか。こういう仕事ってあんまり認知されてないじゃないですか。だから一から説明しなくちゃいけないんですけど(笑)

みんな音楽がやりたいっていう人ばっかりなんで、で、まわりも音楽業界に就職してたりするんで、真剣に話を聞いてくれるし、こないだの現場はどうだった、とか色々と情報交換をしたりしますね。

自分が携わったアーティストが売れるとやっぱり嬉しいですよね。

はい。テレビで流れたり、ラジオで流れたり、CD出したりすると、やっぱすごく嬉しいですね。

ローディーを目指している方々にアドバイスがあったら、お願いします。

アドバイスですかー?僕自体が駆け出しっていうのもあると思うんで。難しいですね~。やっぱりどんな仕事もそうだと思うんですけど、入ってやってみないとわかんない部分があると思うんですよ。

厳しいかどうかっていったら、どの仕事も厳しいと思うし、とりあえず自分から動いて何の仕事でもいいんでやってみて、それで自分の中で合ってないなと思ったら辞めることもあるだろうし、それがほんとに好きだったらやればいいと思うし。

ローディーとして大事なことはズバリ一言で言うと?

なんだろう。まず第一に機材を預かって全部任されるんで、その取り扱いが大事だと思うんですよ。あと、コンディションですね。機材のコンディションもあるし、アーティスト自身のコンディションをサポートしてケアやフォローをしてあげるっていう、それが僕の中では一番大事かなと思いますね。

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