コンサートを創っているのはアーティストだけじゃない!

2001年3月13日発行 シンコーミュージックMOOK「音楽の全仕事2002」より

(株)チームアクティブ 代表取締役 河原真澄さん

海外ではツアースタッフ全員を”ローディー”と呼ぶ。
日本ではなぜ、違う使われ方をしているのか?
その答えは、音楽に魅せられ、日本のコンサートにこだわり続けて、
ついに”日本型ローディー”を確立した一人の男の夢が握る。

日本独自のローディーが、コンサート制作を変える

コンサートツアーの楽器や機材を管理し、そのセッティングやチューニングなどを担当するスタッフを“ローディー”と言うが、実はこの言葉、使い方が間違っている。欧米でローディーとはツアースタッフ全員を指す名称で、PAや照明なども含まれている。この“ローディー”の日本的な意味を普及させたのが、河原社長である。

「それどころか、ミュージシャンもアーティストも。ツアーバスや11トン・トラックに乗って移動する全員がローディーですよ(笑)。でもね、僕がこの名称を使ったことには、深いわけがあるんです」
チームアクティブは間もなく設立10年。会社組織になる前はローディーの集団であり、そのチームが結成されてから17~18年になる。会社登記はチームアクティブより早いところもあるが、日本語で組織的にこの仕事を始めたのは、河原社長がまさに草分け的な存在だ。

河原さんがローディーを始めた頃、この仕事は”ボーヤ”の人がほとんどだった。ボーヤとはバンド・ボーイ。つまり、ミュージシャンの楽器をならうために付き人として働く人のことを指している。

「僕が22歳ぐらいの時に、いろんなアーティストの現場に行って、そういう人たちの動きを見てね、これってもっとちゃんとできる仕事だよなって思ったんです。その頃、神宮球場で大きなイベントがあって、海外からグリーンベレーというローディー・チームが来日したことがある。

これが、めちゃくちゃかっこいい。軍服来て、グリーンのベレー帽かぶって、全員インカム刺してるんです。で、専用の荷が着くと、マーシャルから何から全部分解してチェック。サウンドチェックの時も、ダメだって差し替えられたアンプなんかを全部バラして見ているわけです。本当の技術マンがそこに来ていたわけ。欧米で”テック”と呼ばれる人たちだったんですよ」

このテックが、本来ならボーヤに変わる言葉になるはずだった。しかし、テックとは各楽器を担当するテクニシャンのこと。ドラムなら“ドラムテック”、ベースなら“ベーステック”というスタイルになっている。各パートにすべて起用できるほど予算的な余裕は、日本の業界にはない。
「当時僕は白井貴子&クレイジーボーイズを担当していたけど、彼女にしても、デビュー当初は僕一人だけでツアーをまわっていました。ローディーが二人起用できるのは、ミディアム・ヒットぐらいしていないとだめだった。日本は欧米と違って予算が少ないし、そこにかけられる人件費も限られている。いわゆる“マルチ”でローディーという業務をしないと、理屈に合わない。ここがポイントでした。要するに、ギターだけ、ベースだけ、ドラムだけっていうのではなく、全部のことをきちんとできる。そういうことが一つの組織としてできあがっていけば、コンサートの制作自体がもっと変わるんじゃないかと思ったんです」

ここに日本型のテクニシャン集団が誕生した。でもこの形態を、”テック”と呼ぶのはどこか変だ。

「マルチのケアーは、やはりテックじゃない。仲間と話し合ったとき、日本でもちらほら使われだしていた”ローディー”が浮かんだんです。確かに、正確な使い方じゃないけど、自分たちでこの言葉を普及させてみようということになった。ローディには、”縁の下の力持ち”、”影武者”、”黒子”っていうイメージがあるでしょう。みんなこの言葉に自負を持って、自分たちの可能性を真剣に考えたんです」

人間性、メンタルな部分がローディーに求められる

今やステージ上のミュージシャンが、エフェクターを操作することは少ない。ローディーがすべて、見えない場所で操作しているからだ。エフェクターの拘束から離れて、ミュージシャンは自由にステージを動き回れるようになる。今はごく当たり前の、この作業も当初は他のスタッフになかなか認めてもらえず、その作業を確立していった一人が河原さんである。

「男性は男性なりの、女性は女性なりのステージ演出ってあるじゃないですか。女性アーティストなら見た目も華麗なステージがいいし、シンプルな構成のステージにローディーを呼び寄せる男性アーティストってやっぱりカッコいいよ。僕がエフェクターを操作すれば、ミュージシャンは自由に動けて迫力あるステージになる。ギター弾いているだけでディストーションやフランジャーがかかるのって、海外ではあたりまえだったけど、日本ではまだまだ認知もあまかった。白井さんのコンサートで僕がその準備をしていると、事務所の社長がやってきて“河原、これで日本の音楽も変わるぞ!”って言ってくれたんです。嬉しかったですね」

河原さんたち、初期からのメンバーの活躍で、チームアクティブは第二段階に入っている。今ではテックとして働くスタッフも多く、新しい仕事も生まれてきはじめた。

「この世界もコンピュータの進出が目覚ましくて、ミュージシャンはコンピュータの事も考えなくちゃいけないので、演奏に専念できなくなってきているんです。打ち込みのプログラミングもありますよね。それで、マニピュレートとセッティングが一緒にできるローディー件マニピュレーターが求められてきたんです。そうなると、そういう事って技術だけじゃなくてセンスも必要だし、プログラミングとなるとクリエイター的な部分も要求されてくるんですよ」

河原さんには大きな夢が二つある。一つは、現在80数名のチームアクティブのスタッフを、テックのレベルで100人にすること。もう一つは、チームアクティブが築き上げた”日本型ローディー”のスタイルで、本場アメリカのエンターテイメントビジネスに乗り込むことである。どちらの夢も、実現の可能性は極めて高いものだ。

「ローディーは、良いミュージシャンに出会って、良い知識をいただいて、その知識を知らないミュージシャンに手渡す役割を持っていると思います。この仕事、技術だけじゃなく人間性も絶対に大切なんです。人が人に求められて仕事をするんだから、人に応えられるだけメンタルな部分を磨かないと」

河原さんの目指すものは大きい。